医療材料の供給、組織的に対応‐大和郡山市薬剤師会

 在宅医療を円滑に推進するため、医療材料を供給する役割が薬局に求められている。奈良県の大和郡山市薬剤師会は数年前、厚生労働省の補助金を受けて実施された医療材料等供給支援事業に参加。4軒の基幹薬局が必要な医療材料を備蓄して患者宅に配達したり、地域の かかりつけ薬局を通じて届けたりする体制を構築した。それまで実質的に医療材料の供給を担っていた訪問看護ステーションの業務負担が軽減したほか、必要な医療材料を1個単位で調達できることは医師のメリットになった。薬局にとっても、多職種との顔の見える関係づくりに役立ったという。


 在宅医療には、各種カテーテルやチューブ、注射のルートや針類、褥瘡や火傷に使うパッド、サージカルテープ、各種滅菌ガーゼなど様々な医療材料が使われる。必要な医療材料は主治医から供給される仕組みだが、▽使用頻度が低いものでも箱単位で購入せざるを得ず、期限切れによって無駄が生じる▽訪問看護ステーションが医療材料の供給を担うことも多く、在庫管理や配達が負担になる――などの問題が生じていた。

 この問題に頭を悩ませていた訪問看護ステーションの看護師からの依頼を受けて、大和郡山市薬剤師会がこの事業に参加した訪問看護ステーションの近隣に位置し、在宅医療に関わっている3薬局を含む4軒の薬局が基幹薬局の役割を担当。必要な医療材料を取り揃えて、患者宅に配達したり、地域の薬局に分譲したりすることになった。

 医療材料といっても様々なメーカーの多種多様な製品が存在する。この地域でどんな医療材料が使われているのか、訪問看護ステーションを対象に調査し、その結果をもとに各地域の特性に応じて4軒の基幹薬局がそれぞれ医療材料を購入し、取り揃えた。

 医療材料を供給する仕組みはこうだ。医療機関からの発注を受けて薬局が医療材料を納品したり、患者宅に配達したりする。基幹薬局が自ら担うほか、地域の薬局に分譲することによって、地域全体の薬局が医療材料を供給できる体制を形作った。

 医療材料の費用は、医療機関から受け取るケースと患者から受け取るケースと2通りある。医師の在宅療養指導管理料の範囲内で医療材料の費用をまかなえる場合には医療機関から、その範囲を超えて提供する場合には患者から受け取る。薬局が医療機関や患者に医療材料を販売する値段は、卸からの仕入れ値に在庫管理費用を上乗せした価格に設定。配達時には配達費用として患者から400円をもらう仕組みにした。モデル事業として2012年度に構築した仕組みが、現在でも活用されている。

1個単位での供給を実現


 薬局が医療材料を供給することによって、医療機関や訪問看護ステーションにおける医療材料の在庫負担や在庫管理の手間は軽くなった。

 医療材料は、種類が多い上に、卸から仕入れるまでに2週間前後の期間を要するものもあり、在庫管理には技術が必要になる。薬局には医薬品で培った在庫管理のノウハウがあり、医療材料の取り引きも容易に行える。薬局であれば高度管理医療機器を取り扱う許可も取得しやすい。薬局が医療材料の在庫管理を手がけることは理にかなっているという。

 また、薬局には、地域の薬局で組織的に医薬品を分譲し合う仕組みが備わっている。この仕組みを使って医療材料の在庫を地域全体で持ち合い、1個単位で医療材料を供給する体制を構築できた。薬局を活用すれば、使用頻度の低い医療材料を医療機関が箱単位で購入し、使用期限切れで廃棄することがなくなる。

 事業に参加した基幹薬局の一つ、ハル薬局の薬剤師、仲谷尚起氏は「診療所で1個しか使わない医療材料でも、薬局では在庫を持ち合って要らないものは他の薬局に回したりできる。医師は1個単位で購入でき、Win‐Winの関係を築ける」と話す。

 訪問看護ステーションの看護師にとっては在庫管理業務の軽減に加えて、医療機関に医療材料を取りに行ったり、患者宅に配達したりする手間が軽くなって、本来の看護業務に力を注げるようになった。実際に、訪問看護ステーションの近くにある基幹薬局では、薬を調剤し患者宅に届けて管理するという業務に併せて、医療材料の配達を担当。訪問看護ステーションが医療材料を運搬することは少なくなった。

 患者は、医療材料の配達のついでにオムツなど様々な物品を薬局から購入し、持ってきてもらえることを歓迎した。薬局を通じた訪問看護ステーションの物品購入も増え、関連業務は薬局の経営に貢献したという。

 薬局にとっては、この事業を通じてケアマネージャー、訪問看護師など多職種とのつながりが生まれたことも大きかった。仲谷氏は「これまで訪問看護ステーションの看護師と話したことは少なかったが、『こんな医療材料がありますか』と相談を受けるようになった。顔の見える関係を構築できたのが非常に良かった」と振り返る。

薬局の認知度向上へ


 一方、取り組みを通じて課題も見えた。JCHO大和郡山病院前に位置するハル薬局は、在宅医療にあまり関与していない。医療材料の在庫は持っていなかったが、モデル事業の参加を機にリストアップされた医療材料を全て取り揃えた。購入費用は約30万円。問い合わせを受けて自ら供給したり、近隣薬局に分譲したりする機会はあったが、使用期限切れを迎えて廃棄せざるを得ない医療材料も少なくなかった。最近は卸から1個単位で仕入れられる医療材料が増えたため、「それを積極的に利用し、1~2個だけ在庫を置いてまずはそれで対応し、その後は薬局間で融通し合う形をとっている」と仲谷氏は話す。

 また、医療材料を切り口に多職種とのつながりは生まれたものの、ハル薬局の在宅医療への関わりはまだ十分ではないという。「薬局は薬を渡すだけというイメージが強い。在宅医療における薬剤師の役割が、まだ多職種に十分理解されていない現状がある。薬剤師の役割をアピールする勉強会を開いて、認識を深めていきたい」と仲谷氏。現在担当する在宅患者は1人だが、「訪問看護ステーションとの関係ができた。そこからの相談が、次につながるのではないか」と見通す。

 現在、他の地域でも薬局が医療材料を供給する体制の構築が進められている。医療機関は使用頻度の高い医療材料を自ら購入する傾向が強く、使用頻度が低いものや、在庫を持ちたくないものを薬局が取り揃える役割になる。「在庫負担がネックになるため、一つの薬局で取り組むのは難しい。地域の薬剤師会として協力する薬局を募り、運用した方がいい」と仲谷氏はアドバイスを送る。

 このほか「医師の理解が非常に重要になってくる」。在庫負担が軽くなる代わりに、卸より高値で薬局から医療材料を購入する仕組みを医師に理解してもらい、保険制度における医療材料の費用負担の全体像についても理解を得る必要があるという。

薬事日報より

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