RMP施行から1年‐安全性情報管理は“守り”から“攻め”へ

製薬企業は、医薬品の副作用リスクを可視化し、適正使用へと導く安全性情報管理を強化している。安全性情報管理に関して開発から上市後まで一貫した組織体制に改め、グローバルでの一元管理のもと、個々の薬剤のリスクベネフィットを評価。昨年4月に国内で施行された「リスクマネジメントプラン」(RMP)への対応も含め、“育薬”の実現に向けた仕組みづくりを急ぐ。ただ、上市後の安全対策を進める上では、部門横断的な連携や、医療機関とのリスクコミュニケーション、ITシステムを活用した情報基盤などが必要。今後、安全性情報管理体制が企業の成長性を大きく左右しそうだ。

ファイザー日本法人‐PMSで世界に先行する


 欧米で承認された医薬品が日本で使えない「ドラッグラグ」が解消傾向にある中、希少疾患薬や未承認・適応外薬が国内治験なしで承認されるなど、市販後に薬剤のリスクベネフィットをどう検証していくかに焦点が当たっている。昨年4月には、新薬の承認申請時に、製薬企業に上市後の安全対策として提出を義務づけた「RMP」が国内で施行された。これまでは規制当局からの指示を受け、製薬企業が実施する形式で、薬剤特性に関係なく「使用成績調査3000例」が通例であった。

 現在では、製薬企業が薬剤ごとに安全性検討事項を決め、使用成績調査・市販後臨床試験などの「安全性監視計画」と、副作用が疑われる事例が発生した場合には「リスク最小化計画」に則った安全対策を立て、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認を受けて実行していかなければならない。既に数件がRMPとしてPMDAに提出、承認を受けている。

 海外で多くのRMP作成実績を持つ外資系製薬大手は、グローバルの医薬品リスク管理で一日の長がある。ファイザー日本法人では、グローバル本社と協調しながら、4年前から国内でRMPを作成してきた。

 「製造販売後調査(PMS)の患者データベースを構築する」。ファイザー日本法人取締役医薬開発部門長・メディカル本部長の原田明久氏が昨年の本紙取材でこう語った。世界同時開発を推進し、ここ数年で医薬品開発スピードで米国と肩を並べた。そして、「医療保険制度が充実し、他国に比べて集積しやすい日本のPMSデータを全世界に発信し、グローバルで活用していく」とPMSに照準を定める。将来的には治験データなどと統合し、事業課題の把握や戦略決定のツールとなる“ビッグデータ”にするのが目標だ。

 RMPの策定から実行までは、部門横断的な対応がどうしても必要になる。例えば、副作用との関連性が否定できない重要なリスクの特定や、 添付文書への記載の必要性を検討するのは「開発」「安全性」、使用成績調査は「安全性」、製造販売後臨床試験は「PMS」、添付文書改訂は「薬事」と担当部署が異なってくる。

 ファイザー日本法人では、原田氏がPMS部門を直轄し、開発と市販後を包括した連携体制を構築。承認申請する前に「PMS」「安全性」「開発」「信頼性保証」で構成された会議を開き、RMPを作成している。

 RMPは、製薬企業が主体的に創意工夫して上市後の安全対策を行える分、従来よりも短期間・低コストで薬剤のリスクベネフィットを評価できる可能性があり、「企業の競争力を大きく左右する」としている。

中外、アステラス‐グローバル体制を整備


 日系企業も、安全性部門の組織体制見直しや人員体制強化を急ぐ。ただ、有効性情報を収集し早期に承認を取得したい開発部門と、市販後のリスクにフォーカスする安全性部門では、意思疎通や目標共有が難しいのも現状。国内大手の開発責任者は、開発と市販後をつなげる体制がないことについて、「われわれの課題の一つ」と認めた。

中外製薬は、抗癌剤などリスク管理が必要な製品を多く扱い、国内でも先進的な取り組みを進めている。2009年には安全性に特化したスタッフ約200人を擁した「医薬安全性本部」を設置。昨年10月には、欧州の新しい薬制への対応や、RMP導入・コミュニケーション強化を目的に、安全性本部内の組織変更を実施した。

 国内外で一貫したグローバル水準の医薬安全性機能が強く求められる中、副作用だけでなく、製品のリスクベネフィットのバランスが重要とし、絶対数で論じる安全性から、疫学やシグナル検出マネジメントを駆使した評価方法を確立するのが狙いだ。

 具体的な実施事項としては、 [1]安全性疫学機能をグループとして設置 [2]副作用シグナル検出体制の構築 [3]医学専門家を雇用し、全症例評価を実施 [4]開発段階からの安全性プロファイル確立のためのグループ編成の変更 [5]エビデンス確保のための調査機能強化 [6]総合評価ドキュメント等アーカイブ管理強化 [7]コンプライアンス機能充実のため、手順管理・教育グループ新設 [8]患者・医療機関に提供する情報の充実、コミュニケーション方法の強化に向け、安全性コミュニケーショングループを設置――など多岐にわたる。

 各機能の代表者で構成し、全社的な視点から製品最大化を考える組織「ライフサイクルチーム」に、医薬安全性本部から安全性機能リーダーとして参画し、開発段階から製品の安全性プロファイルの確立や、製造販売後調査の安全性確保のための計画立案を行っている。市販後においても、開発部門とベネフィット検討やリスク評価のための計画、実行の協力体制ができているという。

 また、営業本部とMRが医療機関へ提供する情報については、よりニーズに合った情報を迅速に提供し、IT等も駆使して的確な情報提供ができるよう連携をとっている。全国各支店には安全性監視や最小化の活動のためのグループ機能が設置されており、連携を図りながら安全性情報を収集・フォローしている。

 ロシュグループや他の国内外の提携会社との間でファーマコヴィジランス(PV)に関する取り決めを徹底。特にロシュグループとは安全性サイエンスやオペレーションの相互コミュニケーション方法を詳細に定め、両社で教育を実施し円滑な運用を行う。製品ごとに安全性評価基準を統一し、個々に評価したデータを安全性情報としてデータベース化し、共通のプラットフォームを構築することで、世界規模での安全性情報の蓄積・評価を可能にした。

 アステラス製薬もグローバル運営体制を強化。昨年4月1日付で、グローバルの規制要件に対応するために、これまで各極ごとに実施してきたPV機能をグローバルリーダーのもとに集約する組織として改編した。グローバルPV機能長を新設し、ソングリン・スー氏を招聘した。

 日本のRMPを作成する場合は、PV部が中心となりメディカルアフェアーズ(MA)部、薬事部、開発本部関連部門、研究本部関連部門、プロダクトマーケティング部等と連携をとりながら作成。また、米国や欧州のアステラスのスタッフと共に、米国や欧州で作成されたRMPとの内容を相互に確認して整合性を図っている。

 PV部は、開発部門と治験の有害事象の収集やDSURの作成において連携。MAは市販後安全性管理のための実施部門にしており、市販後に行う調査からの有害事象の収集や、再審査申請、安全性定期報告の作成で連携している。

協和キリン‐集積症例評価行う


 新薬上市が続く協和発酵キリンは、RMPを軸に安全性検討事項の特定、医薬品安全性監視活動、リスク最小化計画を一貫して担当できる体制整備のため、12年4月にGVP関連業務を担当していた部署と、GPSP関連業務を担当していた部署の業務を分けることなく、PVの観点で実行できる機能別な組織に再編した。

 RMPを実施する上では、MRが行う副作用報告などの個別症例処理から、リスク監視を目的とした集積症例での評価が必要になる。同社では、個別症例評価から集積症例評価へのシフトを図るため、個別症例評価業務の標準化・外注化を推進し、PV要員の強化を行っている。

 PV部、PV推進部、薬事部、開発本部などの関連部署横断的な「RMP事務局」の信頼性保証本部に設置し、RMPに関する各種手順の作成、進捗確認、社内教育を行う。RMP作成機能については、開発プロジェクトごとにRMP作成責任者を指名し、プロジェクト関係者(信頼性保証部門、開発部門、営業部門、MA部等)がメンバーとなるRMP作成会議で決定される。

 その後、PV部、PV推進部、開発本部、営業本部、MA部等が協力してRMPを実施。開発部門は、安全管理実施部門・製造販売後調査等実施部門、MA部は安全管理実施部門として連携する。

田辺三菱‐1日付で組織変更


 

田辺三菱製薬は1日付で、開発本部から開発安全性情報部の機能を信頼性保証本部に移管し、「ファーマコビジランス第3部」として新設した。これまでも、開発と安全性が協調して薬剤のリスク管理を実施してきたが、信頼性保証本部内にまとめ、安全性情報の一元管理を図る。また、営業本部内にあったMA部の機能も信頼性保証に移管した。

 各社はITを活用した仕組みも充実させている。リアルタイムにグローバルの安全性情報を全社で共有できるデータベースや、製造販売後調査を電子的に収集し、集まったデータから安全性シグナルを検出、潜在的な重要なリスクを特定するための解析ツールなど、業務プロセス改善につなげる。臨床開発同様、PMS業務をCROへ外部委託を検討する動きも加速しており、ITベンダーとCROが提携し、製薬企業側に開発からPMSまで一括受託する提案も増えているという。

 規制対応だけではなく、収集した安全性データをいかに事業全般に活用していくか。自社製品のリスクベネフィット評価にとどまらず、競合他社製品とのリスクベネフィット比較を行い、開発やマーケティング部門にフィードバックするという使い方も考えられる。経営視点で、安全性情報管理を“守り”から“攻め”に転換する変革の時代を迎えている。

薬事日報より

受付:平日9:00-18:00  担当:福井・大石

  • ISO認証・取得ライセンス一覧
  • 医療・化粧品物流ブログ
  • 医療・化粧品物流用語集
フリーダイヤル 0120-998-094
お気軽にお問い合わせください! 平日 9:00 - 18:00 担当:福井・大石
お問い合わせはこちら
お見積・資料請求はこちら