成長戦略、着々と実行環境整備‐規制緩和面ではなおも攻防

 昨年末の政権交代後、安倍晋三内閣がはじめて取り組んだ2014年度予算概算要求が8月下旬に出揃った。厚生労働省は、成長戦略の実現を後押しするために設けられた「新しい日本のための優先課題推進枠」に1617億円を要求。このうち、米国立衛生研究所(NIH)をモデルとした医療分野の研究開発の司令塔「日本版NIH」の設置に524億円を計上するなど、成長戦略の実行に向けた環境が整えられつつある。同じく、成長戦略の“安全ルールを確保した上で全種類の一般薬のインターネット販売を解禁する”との方針を受けて厚労省が立ち上げた作業グループも新たな販売ルールを大筋で合意した。ただ、発売直後のスイッチOTC薬と劇薬指定の28品目の安全性を検証している有識者会議は、厚労省が結論を出していない上、「ネット販売は行うべきでない」との意見が目立つ。一部品目に規制が残りそうな状況に政府の規制改革会議が懸念を示すなど、成長戦略の実行をめぐる攻防から目が離せない。

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 医療を成長分野の柱に据える安倍政権の目玉施策に位置づけられている日本版NIHは、政府の「健康・医療戦略推進本部」と、新たに設立される独立行政法人が司令塔機能を担うことになる。政府はこの新独法の設立に、来年度予算概算要求で約1400億円を計上しており、本気度がうかがえる。

 日本版NIHには、厚労省をはじめ、文部科学、経済産業などの各省にまたがっていた関連予算を一元化し、戦略的・重点的に配分することで、省庁縦割りによる予算配分の重複などをなくす狙いもある。

 ただ、民主党政権時には、予算権限を放したがらない各省の抵抗にあい、挫折した経緯があるだけに安倍政権の手腕が問われる。

 農林水産省は、漢方製剤や生薬の原料となる薬用作物の国内産地化を進めるため、地域の条件に適した栽培マニュアルの作成や、日本薬局方の品質規格をクリアするための栽培技術の確立など、生産上の課題解決に向けた取り組みを支援する新規事業に4億7000万円を計上した。

 農水省と厚労省は、生産農家と漢方薬メーカーをマッチングする「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」を開いており、省の枠を超えた薬用作物の国内栽培拡大に向けた取り組みに期待が高まる。

●新販売ルール、改正法案提出へ

 厚労省の作業グループがまとめた新ルールでは、ネットだけの販売は認めず薬剤師が常駐する実店舗を持ち、ネットと店舗の業者に第1類販売時の記録の保存を義務付けるほか、店舗閉店後のネット販売業務を認める代わりに、薬剤師らが店舗で勤務しているかを確認するため、店内にテレビ電話を設置するなどして行政の監視体制を整備することなどを概ね確認した。

 厚労省は、二つの検討会の報告書を踏まえ、薬事法や関係省令の改正作業を進め、秋の臨時国会に関連法案を提出したい考えだ。

 ただ、全面解禁を求める政府との調整が難航すれば、1月に最高裁が一般薬の販売を一律に規制した厚労省令は違法と判断した後の“規制のない状態”が長期化することが懸念される。

●降圧剤問題は各方面に影響

 ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」の医師主導臨床研究をめぐるデータ改ざんの問題は、臨床研究に対する不信感を与えた。同剤には、血圧降下作用に加え、既存薬と比較して脳卒中や心筋梗塞などの予防効果に優れているとの日本人のデータがあったが、根拠となる解析データが操作されていた。

 この問題が明るみに出たことを受け、厚労省は真相究明と再発防止に向けた大臣直轄の検討会を立ち上げたが、データ操作をめぐる事実究明は、9月30日にいったん責任追及や再発防止策を打ち出した中間報告をまとめることで打ち切られた。

 中間報告では、不正論文による販促活動でノバルティスが医療保険財政から得た“不当利得”を算定するよう、中央社会保険医療協議会に求める方針が示されており、業界側が新薬創出等加算の本格導入を訴える薬価専門部会での議論への影響が懸念される。

 バルサルタンをめぐっては、同様の作用メカニズムを持つ降圧剤が複数の製薬会社から発売されているが、済生会中央病院のように、病院全体でバルサルタンの採用を取りやめる病院が出てくるなど、経営への悪影響が懸念されるところ。日本の臨床研究に対する信頼の低下は、日本発の医薬品・医療機器の開発を成長戦略の柱に据える安倍政権にとっても大きな痛手といえる。

●次期改定の議論本格化

 中医協薬価専門部会では9月25日、日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)が次期薬価制度改革に向けて意見表明し、そろって「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の本格導入・恒久化を要望した。

 委員からは、加算そのものに対して目立った反対意見はなかったものの、加算の適用を受けているにもかかわらず、未承認薬・適応外薬の開発要請品目がない“ミスマッチ企業”や、加算の恒久化に伴う財政影響を懸念する声が上がっている。

 一方、ラセミ体医薬品光学分割、医療用配合剤の特例等の新ルール案や、7月に薬価算定組織が示した外国平均価格調整の見直し案などの薬価引き下げルールには、診療側や支払側委員は理解を示したが、業界側は反発している。

 いずれも、診療報酬改定の議論が熱を帯びてくる年末にかけて本格化するが、バルサルタン問題の影響も懸念される中、業界側が中医協委員をどう納得させるかが注目される。

薬事日報より

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