ファーマシスト・サイエンティストの育成に尽力

 京都薬科大学は今年、創立130周年を迎えた。ドイツ人教師ルドルフ・レーマンの教えを受けた門人18人によって1884年に創立された京都私立独逸学校を起源に、私立薬系大学では2番目の歴史と伝統を持つ大学として発展を遂げてきた。これまでに輩出した卒業生は約2万2000人以上。製薬会社や病院、薬局、大学、行政などで幅広く活躍する卒業生の実績を背景に、薬業界から高い信頼と評価を得てきた。2006年度から始まった薬学教育6年制では、高度な専門能力と研究能力を有するファーマシスト・サイエンティストの育成に力を入れている。

基礎と臨床のバランスを重視


 京都薬大は、現在の京都市中京区に創立された京都私立独逸学校が起源だ。その別科として開設された薬学科を廃して、1892年に私立京都薬学校を設立。1919年には同校を廃止して京都薬学専門学校が設立され、32年に京都市山科区に校舎を新築移転した。49年に学校教育法によって現在の京都薬大が設立された。

 京都薬大理事長の武田禮二氏は「特定のオーナーが設立したのではなく、自ら学びたいという18人の愛学の徒が学校を設立した。薬学を勉強したいという純粋な想いがあって設立された。その伝統を受け継ぐ非常に真面目な学校といえる」と語る。

 建学の精神に据えられた「愛学躬行」には、学問を愛し自ら実践するという意味が込められている。創立時の先人の想いを受けて、進むべき方向性を表したものだ。

 これまでに2万2000人以上の卒業生を輩出。現在も1万4000~5000人が社会で活躍中だ。京都大学教授・薬剤部長を経て2010年に京都薬大学長に就任した乾賢一氏は「今まで個人的に知っていた薬業界の著名人が実は京都薬大の出身だったことを、学長就任後に初めて知ったことが何回もあった。本当にすごい大学だと思う」と述懐する。

 近年における変化は、薬学教育改革への対応だ。06年度から新たに始まった薬学教育6年制をめぐって当時、京都薬大は大きな決断を迫られた。

 優れた研究成果を社会に発信してきた実績を背景に、国立大学薬学部と同じように4年制課程と修士課程の「4+2」を併存させるのか、それとも6年制課程だけでいくのか、学内で意見は割れた。議論を重ねた上、最終的には評議員会による投票で6年制課程への一本化が決められた。「当時、私はその議論に加わっていなかったが、6年制を選択したのは正解だった」と武田理事長は語る。

 6年制課程に一本化して以降、新たに編成したカリキュラムで教育し、送り出した学生は今春で3期目になる。人材養成の根幹として掲げる目標は“ファーマシスト・サイエンティスト”の育成だ。その概念を乾学長は次のように解説する。

 「医学では、臨床医学と基礎医学がお互いに切磋琢磨している。6年制にしたら従来のように研究ができなくなると言われるが、それはおかしい。薬学にも基礎と臨床がしっかりあるべきだ。医療薬学教育の充実はもちろんのこと、基礎薬学も両方バランス良く発展させて、将来を背負って立つ人材を養成しなければならない。このような考えから京都薬大では、医学と同じようにサイエンス(科学)、アート(技術)、ヒューマニティー(人間性)のバランスがとれ、高度な専門能力と研究能力を有するファーマシスト・サイエンティストの育成を目指している。以前の大学院修士課程を超えるような教育や研究を展開していくことが重要で、この概念は学内外に浸透してきている」

充実した初期導入教育


 ファーマシスト・サイエンティストの育成に向けて、どのような教育を展開しているのだろうか。特徴の一つは、初期導入教育の充実だ。「三つ子の魂百までというように、サイエンス、アート、ヒューマニティーのバランスを最初にきっちり教えることが重要。初年次教育にはかなり力を入れている」と乾学長は言う。

 初年次教育の基礎演習では、自ら問題を発見し解決していく問題解決型学習(PBL)を基盤に、学生が少人数で意見交換するスモールグループディスカッション(SGD)の手法を取り入れて、演習を行う。医療をテーマにグループ単位で問題提起、情報収集、解決策の探索、発表、議論、レポート作成までの一連の流れを、学生が主体となって修得する。

 早期体験学習においては、病院や薬局を訪問して薬剤師の業務を見学したり、製薬会社の研究所や工場を見学したりするほか、薬害被害者の講演を聞き、薬剤師として何ができるのかを学ぶ。また、ハンディキャップの疑似体験を通して、医療人としてのやさしさや思いやりを考えさせている。

 企業や病院、薬局見学の目的などを明確にするために、訪問前にはSGDを実施。早期体験学習で学んだことをポスターにまとめて展示し、意見交換するなど、基礎演習と早期体験学習を連動させていることも特徴だ。

問題発見・解決の能力を醸成


もう一つの特徴は、問題発見、問題解決能力を養う教育を充実させていることだ。その一環として3年次後期という早い段階から、学生を20以上の研究室のいずれかに配属して「総合薬学研究」が始まる。担当教員や先輩の指導を受けて、研究テーマの立て方、研究設備・機器の使い方、解析や分析方法を学んだ上で、4年次にかけて実際の研究課題に取り組む。

 5年次に学生は、ニーズに応じて「探求薬学コース」、または「実践薬学コース」のいずれかに分かれる。探究薬学コースでは3~4年次の研究テーマを継続し、より深く研究を進める。実践薬学コースでは薬物療法、医薬開発、地域医療などの各プログラムからいずれかを選択し、実務実習のみでは修得困難な内容を、演習や体験プログラムによって学び、その職能への関心や意識を高める。

 各コースにおける学習には、実験的・調査的研究に加え、PBLやSGDを積極的に取り入れている。こうした一連の研究によって、基礎薬学研究を含めた医薬品の開発や適正使用にわたる広範な領域での問題発見、問題解決能力を醸成するという。

 研究に対する学生の意欲を引き出すため、12年度には「優秀研究賞」を新設した。対象は、筆頭著者として学術雑誌に英語の原著論文が掲載された学生。12年度は2人、13年度は1人が受賞した。各種学会での発表も奨励している。

 また、国際化に対応するため、3日がかりで開く卒業論文発表会でのポスター発表やプレゼンテーションは英語で行うことを、今春に卒業した学生から義務づけた。「そんなに大きな反対はなかった。意外にうまくいった。機会を与えたら学生はちゃんと対応する。教員は苦労したと思うが、学生は立派だった」と乾学長は振り返る。

 発表会には、国際学術交流協定を締結している3大学のうち、中国の瀋陽薬科大学とエジプトのアレキサンドリア大学から教員と学生計11人を招いた。招待者と学生の間で活発な質疑応答が交わされ、学生は英語でうまく対応していた(写真)。その後の懇親会も盛り上がったという。

 カリキュラム全体としても外国語の強化に力を入れている。基礎的な科学英語の履修を出発点にして、薬学英語や医療現場で必要な英会話能力を習得できる教育体系を構築。TOEICの受験も推進している。

 13年5月には、全世界で医薬品開発業務受託事業を展開しているパレクセル・インターナショナルと、グローバル人材育成プログラムに関する包括協定を締結した。夏休み期間中に開いたサマープログラムには5年次生を中心に22人が参加。臨床試験の内容、臨床試験実施に関するガイドラインなどについて、同社の外国人講師が英語で行う講義を受講した。

 一方、病院や薬局の実務実習において、出身地に戻って実習を受けたいと希望する学生には「ふるさと実習」が可能な体制を整備している。各都道府県にいる京都薬大OB約30人を特命教授に任命し、実習前、実習中、実習後に施設を訪問してもらう地域密着型の指導を実践。学生が安心して実習に取り組めるようにしっかりサポートし、質の高い実習の実施を支援している。

時代の先端を行く大学院に


 6年制薬学教育に加えて大学院の充実に力を入れていることも、京都薬大の大きな特徴だ。6年制薬学部の上に設置する大学院薬学研究科薬学専攻博士課程(4年制、定員10人)のほか、他学部出身者や外国人留学生を対象に、独立専攻の形で大学院薬学研究科薬科学専攻博士前期課程(2年制、定員5人)、同後期課程(3年制、定員2人)を設けている。

 「薬学部の教育と大学院は切り離して考えにくい。大学院を充実させると学生の教育にもいいお手本になる。充実させると学部学生の意識も変わってくる」と乾学長。4年制博士課程の定員を数人に設定する私立大学が多い中、京都薬大の定員は10人と多い。それだけ見ても京都薬大の意気込みが分かろうというもの。同課程の定員は毎年度充足しており、社会人の比率は全体の1~2割と小さい。

 「6年制薬学部の上に位置する4年制の博士課程が極めて重要。薬剤師免許は日本の中でしか通用しないが、博士号はグローバルスタンダード。製薬会社に就職するにしても国際化が進展する中、将来必要になる。また、医療現場で働くにしても、学位を持っている医師は多い。さらに、大学教育を担う後継者の育成という意味でも、博士号を持った薬剤師をもっと送り出さないといけない。4年を長いと考えるかどうか。学位は特急券だと思っている」と乾学長は強調する。

 4年制博士課程には「基礎薬学コース」「臨床薬学コース」を設けると共に、医学系大学と連携してがん研究に特化した「がんプロコース」、医薬品医療機器総合機構と連携した「レギュラトリーサイエンスプログラム」を設置。時代の先端を行く基礎薬学、臨床薬学の研究者を養成すると共に、これまでの研究実績を基盤に独創的な研究を展開している。

 大学院生への支援制度も充実。主にリサーチ・アシスタント制度(支給年額120万円)や博士課程の3~4年次に3カ月から1年ほど海外に留学して研究を行える制度がそれにあたる。博士課程活性化の一例だ。

 また、縦割りではなく、分野を超えた指導を行えるような体制や文化も今後、形作っていく。「博士課程の数と中身を充実させる。今までの大学院の弱点である『分野縦割り』を見直し、分野を超えた指導や交流が必要になる。教授1人がやれることは限られている。京都薬大全体でまとまって取り組む文化を形作って、リーダーシップを発揮する人材、世界に通用する人材を育成していきたい」と乾学長は語る。

 6年制薬学部と大学院の双方を充実させて、大学全体の底上げや意識改革、文化の醸成を進める考えだ。「薬学教育6年制になって研究能力が落ちるのではなく、発想を転換させれば、新しい研究を展開できる可能性は十分にある。いい教育といい研究は切り離すことができない。一体となっていいものを作り上げていきたい」と乾学長。現在、薬剤師養成の大部分は私立大学が担っている。京都薬大が新たな薬学教育や研究のモデルを構築して、他大学をリードする存在になれるように尽力したいという。

 6年制薬学教育に加えて大学院の充実に力を入れていることも、京都薬大の大きな特徴だ。6年制薬学部の上に設置する大学院薬学研究科薬学専攻博士課程(4年制、定員10人)のほか、他学部出身者や外国人留学生を対象に、独立専攻の形で大学院薬学研究科薬科学専攻博士前期課程(2年制、定員5人)、同後期課程(3年制、定員2人)を設けている。

 「薬学部の教育と大学院は切り離して考えにくい。大学院を充実させると学生の教育にもいいお手本になる。充実させると学部学生の意識も変わってくる」と乾学長。4年制博士課程の定員を数人に設定する私立大学が多い中、京都薬大の定員は10人と多い。それだけ見ても京都薬大の意気込みが分かろうというもの。同課程の定員は毎年度充足しており、社会人の比率は全体の1~2割と小さい。

 「6年制薬学部の上に位置する4年制の博士課程が極めて重要。薬剤師免許は日本の中でしか通用しないが、博士号はグローバルスタンダード。製薬会社に就職するにしても国際化が進展する中、将来必要になる。また、医療現場で働くにしても、学位を持っている医師は多い。さらに、大学教育を担う後継者の育成という意味でも、博士号を持った薬剤師をもっと送り出さないといけない。4年を長いと考えるかどうか。学位は特急券だと思っている」と乾学長は強調する。

 4年制博士課程には「基礎薬学コース」「臨床薬学コース」を設けると共に、医学系大学と連携してがん研究に特化した「がんプロコース」、医薬品医療機器総合機構と連携した「レギュラトリーサイエンスプログラム」を設置。時代の先端を行く基礎薬学、臨床薬学の研究者を養成すると共に、これまでの研究実績を基盤に独創的な研究を展開している。

 大学院生への支援制度も充実。主にリサーチ・アシスタント制度(支給年額120万円)や博士課程の3~4年次に3カ月から1年ほど海外に留学して研究を行える制度がそれにあたる。博士課程活性化の一例だ。

 また、縦割りではなく、分野を超えた指導を行えるような体制や文化も今後、形作っていく。「博士課程の数と中身を充実させる。今までの大学院の弱点である『分野縦割り』を見直し、分野を超えた指導や交流が必要になる。教授1人がやれることは限られている。京都薬大全体でまとまって取り組む文化を形作って、リーダーシップを発揮する人材、世界に通用する人材を育成していきたい」と乾学長は語る。

 6年制薬学部と大学院の双方を充実させて、大学全体の底上げや意識改革、文化の醸成を進める考えだ。「薬学教育6年制になって研究能力が落ちるのではなく、発想を転換させれば、新しい研究を展開できる可能性は十分にある。いい教育といい研究は切り離すことができない。一体となっていいものを作り上げていきたい」と乾学長。現在、薬剤師養成の大部分は私立大学が担っている。京都薬大が新たな薬学教育や研究のモデルを構築して、他大学をリードする存在になれるように尽力したいという。

近隣大学や医療機関と連携


 教育や研究の充実に向けて京都薬大は、意思決定の早さや実行力という単科大学の強みを生かしつつ、様々な連携を活用してアクティビティーを高める体制を構築している。  11年7月には京都薬大、京都工芸繊維大学、京都府立医科大学、京都府立大学の4大学で「ヘルスサイエンス系の教育研究の連携に関する協定」を締結。ヘルスサイエンス分野の共同研究を基盤とした連携を推進している。

 また、個々の医療機関との連携として、06年3月に京都府立医大、同年9月に滋賀医科大学、12年12月に国立病院機構京都医療センター、13年3月には医師の臨床研修施設として著名な洛和会音羽病院とそれぞれ学術交流等における包括協定を締結した。

 協定を背景に滋賀医大、京都府立医大の各研究室で5年次生が4カ月間の研修を受けられる「医大研修プログラム」を10年度から開始した。「附属病院はないものの、それに近い関係は十分できつつある。あらゆる手段を使って活性化しながらファーマシスト・サイエンティストの育成に努めている」と乾学長は話す。

 近年は社会人の生涯教育にも力を入れている。同窓会との共催だった卒後教育の機能を大学本体に移管し、11年11月に生涯教育センターを設置した。

 毎年5~7月に3回開講する卒後教育講座は1回につき3コマ、計9コマの講義で構成。「最近のトピックスを受けて教育内容を設定し、ピカッと輝いている人を講師に選定するなど工夫している。費用も9コマで1万円と格安にしている」と乾学長。同講座は、Web配信によって遠隔地でも受講可能だ。

 このほか、薬剤師の臨床研究を支援する「研究支援セミナー」を8~9月に計3回開催。薬剤師職能に必要なスキルの習得を支援する「実務支援セミナー」を3月に1回開いている。

薬事日報より

受付:9:00〜18:00 (土・日・祝祭日除く) 担当:大石・吉崎

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