再生医療を積極的支援‐産官一体となった取り組みを

日本SMO協会が先週、「iPS細胞の臨床への応用」をテーマに設立10周年記念講演会を開催した。
会場となった東京・日本橋のロイヤルパークホテルには製薬企業やSMOから約200人が集まり、再生医療の動向やSMOの役割について理解を深めた。

将来考えれば「他家」

 講師を務めたのは再生医療分野で世界の最先端を走る理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの高橋政代プロジェクトリーダー、大阪大学大学院の澤芳樹教授、慶應義塾大学の岡野栄之教授、京都大学iPS細胞研究所の高橋淳教授、横浜市立大学大学院の谷口英樹教授の5氏。

 国立病院機構大阪医療センターの楠岡英雄院長、東京医科歯科大学の赤澤智宏教授を座長に、各氏が最新情報を解説した後、行政から厚生労働省の一瀬篤研究開発振興課長と佐藤岳幸審査管理課長、経済産業省の江崎禎英化学産業課長をコメンテーターに迎え、パネルディスカッションを行った。

 パネルでは、まず赤澤氏が“他家細胞”をキーワードに開発戦略を各研究者に尋ねた。

 自家iPS細胞由来網膜色素上皮シートを研究している高橋政代氏は、自家細胞をコストダウンしながら先進医療で行い、他家細胞を治験として実施してきたい考えを説明した。

 高橋淳氏も「自家は自家なりの良さがあるので、ワンオプションとして先進医療で残しつつ、広く普及するという意味で他家にもしっかり取り組んでいきたい」と語り、パーキンソン病のiPS細胞治療について、「自家移植ができるのは孤発例であって、遺伝性の患者は対象にならないので、他家というオプションも十分ある」と述べた。

 自家と他家の両方に取り組んでいる澤氏は「(自家と他家は)ハードルも違えば、有効性も違うし、普及の違いもある。戦略的なビジネス、汎用性の高い医療にもっていくには他家は避けて通れない重要な取り組み」と指摘した。

 脊髄損傷や脳梗塞の再生医療を研究する岡野氏は「脊椎損傷はいつ起こるか予想できず、しかも1カ月以内に投与となると、他家にしなければならない」とし、神経前駆細胞についても他家を中心に開発していく方向性を示した。

 iPS細胞を用いた代謝性臓器の開発を目指す谷口氏は、「血管内皮細胞や間葉系細胞は最初の臨床研究を自家」とした上で、「ただし、将来的な治験、発展性ということではマスターバンク由来のiPS細胞細胞から分化誘導するという、オール他家の方向で技術開発を考えている」と展望した。

規制のあり方課題に

  続いて赤澤氏は、再生医療関連の法整備を踏まえた行政の対応を話題に取り上げた。

 佐藤は「かつて薬事法が先生方にネガティブイメージを植え付けてしまったかもしれないが、今回まさに脱皮し、(臨床研究と治験の)どちらも負担感が変わらないと思っている。医療機関の中で行うことを志向するのか、幅広く製品として出していくのか、疾患や製品の特性に合わせて選択してほしい。早い段階で相談してもらえれば、厚労省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)がお手伝いできる」と答えた。

 また、江崎氏は他家細胞の入手に関する規制上の取り扱いについて、「整理できないままきた部分が多い。研究会を開くかどうかは迷っているが、経産省の中でいったん法律的な整理をしてみる」と語り、さらに、法律で規制されない場合でも「何をしても良いというのは問題があるので、社会的に納得できるコスト、皆が納得できる制度、例えば基金化して売上の一部を入れるとか、場合によってはコストを見えるようにするということをすれば、この国では(他家細胞の入手が)可能だと思う」と述べた。

SMOの役割に期待

 最後に赤澤氏は再生医療を患者に届けるための課題やSMOの役割を演者に聞いた。

 高橋政代氏はSMOやCRCへの期待として、「本当に支えてもらわなければならないと思っているが、ひとつ懸念するのは、今までの薬事法から、かなりフレキシブルな方向に変わったが、運用現場が前のイメージのまま厳しくしてしまうということ。そうならないように意識をぜひ変えてほしい」と語った。

 澤氏は「臨床研究の精度を上げ、治験へスムーズに流れたり、最初から医師主導治験ということを考える上で、SMO、特にCRCの高いレベルを大変頼りにしている。CRCがすぐに再生医療をできるかというと難しい。再生医療は幅が広いことや、GCPがICH‐GCPになってきていることを理解してもらいたい」とした。

 岡野氏は、自身が副責任者を務めるPMDA科学委員会細胞組織加工製品専門部会でセルプロセッシングセンターについて議論を深めると共に、臨床試験の方法を検討していくことを紹介したほか、行政に対して法整備に続いて生物原料基準など周辺の運用規則の改善を注文した。また、試験データを支える人材育成を課題を課題に挙げた。

 高橋淳氏は「再生医療にはマンパワーが必要。リハビリなども含めて全体を医療として育てることが重要。あとは評価の部分で、GLP試験、あるいは遺伝子を調べるといった部分も日本の中でできるように育ってもらいたい」と語った。

 谷口氏はSMOに対し、「これまで治験にとどまっていたのを拡大し、臨床研究の支援も推進してもらいたい」と述べた。

 パネルの総括として楠岡氏は「(外部委託が可能になり)医師が細胞培養業務から解放されるかもしれないが、ドキュメンテーションも大変な作業で、ここからも医師を解放していただきたいという願いがある。SMOには、治験や臨床試験の管理業務にも積極的にアプローチしていただきたい」と強調した。

さらに、臨床研究として再生医療を実施する場合のCOI管理でもSMOの役割に期待を寄せ、「SMOにやってもらいたい業務はどんどん増えていく。それに対応できるように実力を付け、研究の支援をお願いしたい」と締めくくった。

薬事日報より

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