[メディカル版]最近の医療環境

現代社会の特徴

現代社会の特徴は、[1]スピード[2]グローバリゼーション[3]自由の拡大――と言われている。われわれはこのような社会を目前にして、理想と勇気の心をエネルギーとして乗り越えようとしている。


わが国の医療環境と医療危機

現在の医療環境をグローバルに見た場合、「技術で勝ってビジネスで負けている」といわれる。医療には大変な経済的可能性があるが、それらを掘り起こし、15年余に及ぶデフレを今こそ克服しなければならない。そのためには医療産業を経済成長の中心的柱に据えるのは正しい。

 いわゆるアベノミクスは成長戦略の中心に医療産業を据えているが、それに関連して、設備投資を今後3年間で10%増を目指すこと、民間投資を現状の63兆円から70兆円に増加させること、2020年までに中小企業の黒字化を70万社から140万社に倍増させること、過当競争産業を是正し、構造改革企業に税制などの優遇処置を講ずること、世界銀行のビジネス環境ランキングを現在の24位から5位以内にして、企業環境の改善を広げ、世界企業を呼び込むこと等がうたわれている。

わが国の医療危機の克服

わが国の医療危機は多岐にわたるが、特に毎年3兆円近い医薬品・医療機器の輸入による貿易赤字は、結果的に貴重な国民の財産を海外に放出している。その上、毎年1兆円ずつ上昇する医療費の増加はさらに深刻である。

 厚労省によると11年度の国民医療費は38兆5000億円で過去最高を記録し、1人当たり30万1900円に相当し、医療の高度化と高齢化で5年連続最高を更新しているという。

 今日的な財源不足の中にあっても、世界に誇るすぐれた国民皆保険等の医療保険制度は何としても守らなければならない。そのためには規制緩和や法人税、研究費への減税などの政府の施策はもとより、医療およびその周辺産業の効率化や競争力の強化や民間資金の導入を図るなど、全国民の知恵を結集するときであろう。

 現政権は、健康・医療産業の国内はもとより国際競争力強化を成長戦略の中核に位置づけ、資金基盤を強化し、優れた研究成果を医療現場に生かす諸政策を講じて、優れた日本企業の技術力によって新たな医療産業を生み出し、経済成長や雇用の創出、健康増進につなげようとしている。また、政府の体制を整備し、研究費の戦略的予算配分を行い、関連医療機関相互の連携強化を考えている。

 中でも国際競争に打ち勝つためには、日本版NIHといわれる最先端の医療技術開発の司令塔の創設と医療機器や医薬品、医療サービスの海外展開を支援するため、官民共同で設置する新組織(新メディカル・エクセレンス・ジャパン:MEJ)の設置拡充と、医薬品や医療機器の承認申請に当たって民間認証機関の活用や審査要員の増員による承認審査期間の短縮などが急務であると考えている。

バイオ創薬と再生医療

世界の医薬品売上高上位10品目中、半数は欧米開発によるバイオ医薬品である。わが国のバイオベンチャー数は欧米の各1800社の3分の1の538社で、上場したベンチャーは日本25社で米国318社の13分の1に過ぎない。

 再生医療関連の世界市場は、12年で3400億円であるが、20年には2兆円、50年には53兆円が予想されるという。わが国では12年の260億円の市場を30年には1兆6000億円を目指すという。

 再生医療の中でも、iPS細胞の研究は、ヒト幹細胞の倫理問題を解決した結果、爆発的に裾野が広がり、創薬における実用化を目指す分野では国際的に開発競争が熾烈を極めている。最近の京大iPS研究所では根治薬のない筋萎縮性側索硬化症(ALS)やアルツハイマー病などの神経難病に治療効果の可能性のある化合物を突き止めたというし、さらにiPS細胞を使わずにヒトの皮膚細胞から直接心筋細胞、神経細胞に次いで軟骨細胞の作製に成功したという。これによって従来のiPS細胞を経由する方法に比べて経費と作製期間の半減が期待できるという。

最近の医療の海外展開

世界の医薬品市場は11年で95兆円、5年後の16年には120兆円が予測されている。また、医療機器市場は09年で23兆3600億円、15年には31兆900億円が予想されるという。

 個々の製薬企業の売上高と研究費は、世界トップのファイザーは売上高5兆7700億円で研究費7800億円、研究費/売上高14%で、日本でトップの武田薬品は世界では12位で、売上高1兆7500億円で研究費2818億円、研究費/売上高は16%であるという。

 売上高、研究費とも今後はますます増加することが予想され、これらの可能性を踏まえて、医療機器メーカーが内視鏡で世界の90%以上のシェアを占めていることや、製薬企業の武田薬品がスイスの製薬企業ナイコメッド社を1兆円で買収するなど、海外事業進出を積極的に推進している。

おわりに

このような企業環境にあって、今こそ足腰を鍛えなければならないが、現在の日本企業は内向きの保身主義が先行し、求心力やチャレンジ精神などの基礎体力が弱体化しているといわれている。

 15年にわたるデフレの中で、船橋晴雄氏がいうように、経営者は四半期ごとの決算に一喜一憂し、人員削減・成果主義・即戦力がもてはやされ、会社に対する忠誠心の希薄化と共に、社員を長い目で育て、企業が長期的視野に立って成長を図る余裕が失われ、社員の基礎体力を強化するという視点が欠けているように思われる。この際、自身の進んできた道を含めて、反省すべきは反省し、前向きに突き進む勇気を持つことが期待される。

 また、企業は言うまでもなく、クライアントとの信頼の上に成り立っている。信頼は長い期間にわたる自己研鑽と弛まぬ努力によって、初めて培われる。
 しかし、この信頼は、ちょっとした不注意によって瞬時に失墜し、長年の努力を瞬く間に水泡に帰すことがある。最近の食品偽装問題を見れば明らかである。
 このような事態の処理は、平凡ではあるが、誠心誠意そのものによってしか解決することはできない。

 報道によると、サッカーの本田圭祐選手は世界選手権への出場を自身のフリーキックで決めたとき、次のように語ったという。
 「人間って気が緩んでいないと自分では思っていても、気が緩んでいるものだと思う。引き締めるには、くどいほど自問自答するしかない」
 これはスポーツに限らず、全ての医療機関で働く者にとっても肝に銘じておく言葉であろう。

薬事日報より

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