新たな時代へ基礎固め‐2013年薬業界10大ニュース

 ネット販売解禁、医薬品・医療機器の特性を踏まえた見直しといった二つの薬事法改正が臨時国会で成立するなど、今年は慌ただしい中にも、何となく落ち着いて年の瀬を迎えた感が強い。米国のレーガノミクスではないが、日本でもアベノミクスの政策が打ち出され、先はまだ見えないものの、景気の浮揚感が漂う。薬業界でも新たな時代に対応した動きが見られた。恒例の薬業界10大ニュースを選んでみた。

ネット販売解禁決まる‐「要指導医薬品」設ける

一般薬などの新たな販売ルールを定めた「薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律案」が成立した。ほぼ全ての一般薬についてインターネット販売を解禁する一方で、劇薬指定品目と医療用から一般用に転用して安全性評価が終わっていないスイッチ直後品目は「要指導医薬品」という新カテゴリーを設け、薬剤師による対面販売に限定している。

 今年1年は、医薬品のネット販売問題が注目を集め続けた。1月に最高裁で国が敗訴したことから始まり、2月には「一般用薬のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」が設置された。6月には安倍晋三首相が一般薬のネット販売解禁宣言を発し、8月からはルール作りの検討会と市販後調査品目と劇薬指定品目の専門家検討会がスタート。11月から始まった臨時国会に、薬事・薬剤師法改正案が提出された。

 成立した改正薬事・薬剤師法に関しては、スイッチ直後品目について、これまで4年間かかっていた安全性評価を原則3年以内に短縮。評価中の医薬品は対面販売を義務づけ、評価が終わり次第、一般用に移しネット販売を認めた。

 第1類の販売は、対面でも年齢や医薬品の使用状況確認などを義務づけた。また、情報提供義務の免除規定を見直し、薬剤師が「説明不要」と判断しない限り、使用者の情報収集や説明を行うようにした。

診療報酬改定率決まる‐全体0.1%増と微増を確保

 2014年度診療報酬改定は、来年4月の消費税8%増税対応分を含め、全体の改定率0・1%増で決着した。薬価・材料価格を0・63%引き下げ、医師の技術料など本体を0・73%引き上げて微増を確保した。

 診療報酬改定の方向性としては、医科では病院薬剤師の最重要課題だった「病棟薬剤業務実施加算」が今年度以降も継続して実施されることが確定した。

 前回改定で導入された同加算は、附帯意見で病棟業務の調査・検証を行うとされていたが、病院勤務医の負担軽減に関する13年度調査結果で薬剤師の病棟配置の効果が示され、高い評価を得たことが決め手となった。

 ただ、算定が入院後4週間までの療養病棟・精神病棟については、中央社会保険医療協議会で撤廃することに慎重意見が出ており、実現するかは難しい情勢だ。

 一方、抗癌剤の副作用を改善するため、薬剤師等が継続介入し、チームで指導管理を行うことも評価する方向だ。薬剤師の指導が副作用の適切な管理、軽減につながるとし、外来患者を薬剤管理指導料2の対象に追加し、経口抗癌剤のみ投与している患者も外来化学療法加算を認めること等が想定されている。

 さらに医師、訪問看護師、薬剤師等のチームで褥瘡ケアを行うことを評価する方向性も示され、要件や点数を年明けの議論で詳細を詰めていく。

薬価改革の骨格固まる‐新薬創出加算は試行継続

 次期薬価制度改革の方向性が固まった。まず後発品の薬価に関して大きな改革を行う。価格帯を最高価格の30%以下、30~50%、50%以上の三つに絞り、最高価格の30%以下の既収載品は、統一名収載とする。

 後発品の初収載薬価については、厚労省の当初案は先発品の0・5がけが提案されたが、後発品業界の反発を受け、先発品の0・6がけ、銘柄数10以上の内服薬は0・5がけで決着した。

 一方、長期収載品は、後発品が薬価収載され5年が経過後も長期品の占有率が4割以下となるよう置き換わっていない場合、最初の薬価改定で特例的な引き下げを行う。引き下げ幅は未達の程度に応じて20%未満、40%未満、60%未満の場合の率を設定する。

 新薬創出等加算は、新たな特例引き下げの導入を前提に「制度化」する方向性が提案され、小児薬やアンメット薬などを開発する企業に限定する条件もつけたが、中医協委員から反対が相次ぎ、試行継続が決まった。

 そのほか、世界に先駆けて日本で承認を取得した場合、画期性加算か有用性加算Iが適用される新薬を対象に、10%の加算を導入する。

 医療上必要性の高い医薬品の薬価見直しは、注射剤について容量に応じた最低薬価を設定する方向で決着を見た。

薬事法が「薬機法」へ名称変更‐再生医療法を新たに制定

 「薬事法等の一部を改正する法律」と、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が先の臨時国会で成立した。

 改正薬事法では、これまで以上に医薬品・医療機器の安全対策を強化すると共に、日本発の革新的な医薬品・医療機器の創出や、再生医療製品を早期に実用化に結びつけるための措置を講じている。

 安全面では、医薬品・医療機器の製造販売業者に対し、最新の知見に基づいて作成した添付文書を厚生労働大臣に届け出ることを義務づけ、対策を強化。

 再生医療製品を条件つきで早期に承認する。厚労省は、早期承認制度の導入により、実用化までの期間が従来の半分程度に短縮できると見込む。

 また、医療機器の特性を踏まえた制度改正も行う。医薬品とは別の医療機器の「章」を新たに追加。薬事法の名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)に改めることなどが主な柱。

 再生医療新法は、全ての再生医療に国への計画提出や安全性などの事前審査を義務づけ、これまで医療機関での実施に限定されていた細胞培養の外部委託を認めるなど、iPS細胞などを用いた再生医療の実用化に向けた環境を整え、産業育成を促進する。今後は、厚労省や経済産業省が中心となり、1年以内の施行に向けた作業を本格化させる。

後発品の新ロードマップ‐数量シェア目標を高める

 厚生労働省は、4月に後発品の使用促進に向けた新たなロードマップを公表した。

 新たな数量シェア目標は、長期収載品と後発品を含めた置き換え率の新指標を用い、2018年3月末までの5年間で数量シェア「60%以上」を目指すと明記した。

 厚労省によると、新指標では11年9月時点の数量シェア22・8%は40%に相当し、新たな目標値60%は旧指標で34・3%となる。18年3月までに約1・5倍増を目指すことになる。厚労省は「後発品の置き換えが進んでいることを考えると高い目標」としている。

 ロードマップでは、業界団体に供給指針の策定、全後発品メーカーに「安定供給マニュアル」の作成を求めるなど、達成状況のモニタリングを強化する方策を盛り込んだ。モニタリングの結果は、数量シェア目標や後発品メーカーに課す取り組みを見直す際の材料とする。

 また、薬学教育で後発品の使用促進に関する教育内容の充実を促すほか、医療保険上の対応として、診療報酬上の使用促進策を中央社会保険医療協議会で検討することも盛り込んだ。

 ただ、薬局に対する診療報酬上のさらなるインセンティブに対しては、中医協の医師委員を中心に風当たりが強い。

生活習慣病で初のOTC薬‐全国発売は来年にズレ込みも

 生活習慣病を対象とした日本初のスイッチOTC薬が、4月に新発売された。大正製薬は「エパデールT」、日水製薬は「エパアルテ」の製品名で、いずれも第1類。過去に薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会の審議で、医師委員から反対意見が出され、継続審議となった経緯もあるだけに、スイッチ化の実現に小売関係者の期待が集まった。

 両品とも、持田製薬が医療用医薬品として製造販売している高脂血症・閉塞性動脈硬化症治療剤「エパデール」を、一般用医薬品に転用したもので、有効成分EPA(一般名イコサペント酸エチル)を1包中に600mg含有。「健康診断等で指摘された、境界領域の中性脂肪値の改善」を効能とする内服薬。

 通常のスイッチOTCでは、市販後調査(PMS、3年間3000例)が求められるが、これに加え同品は厚生労働省の指示により、300例の「適正使用調査」(1社150例)が条件づけられた。薬剤師が適切に服用対象者を選定し、適切な服用指導・受診勧奨等を行えるかどうかを確認するなど、細かな調査項目がある。

 大正製薬、日水製薬では現在、一部店舗に限定して適正使用調査を行っているが、いずれも登録数の伸び悩み等もあり、全国発売は当初予定よりも遅れる見込みのようだ。

バルサルタン事件で激震‐臨床研究データ操作が発覚

 ノバルティスファーマの降圧剤バルサルタンの医師主導臨床研究をめぐるデータ改ざん問題が、日本の医学界と製薬業界を大きく揺さぶった。折しも今年は、日本製薬工業協会の透明性ガイドラインで4月以降、2012年度分の支払いを開示することになっていた。

 こうした最中に相次ぎ発覚した研究者と製薬企業の不透明な関係。ノ社がバルサルタン臨床研究を実施した京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、名古屋大学、滋賀医科大学、千葉大学の5大学の研究グループに、多額の奨学寄付金を提供していた事実が明るみに出て、利益相反が大きな社会問題化した。

 特に5大学のうち、京都、慈恵、滋賀の3大学でデータ操作を行っていたことが判明。導き出された根拠に人為的な操作が加えられていた事実は衝撃を与え、日本の臨床研究に対する信頼は地に落ちた。

 厚生労働省は真相究明と再発防止に向けた検討会を立ち上げ、中間報告をまとめたが、依然として真相は藪の中にあり、誰がデータを操作したかは特定できていない。

 今後、改ざんデータをもとにした論文を使い、バルサルタンを大々的に販売したノ社に「誇大広告」の疑いがあるとして、厚労省がノ社を薬事法違反の容疑で刑事告発し、捜査当局による実態解明が進むかどうかに焦点が移る。

薬用植物の栽培拡大へ‐全国でブロック会議を開催

 漢方薬原料に使用される薬用植物の栽培拡大に向けた取り組みが、大きく動き出した1年となった。8~9月には、生産農家と漢方薬メーカーをマッチングする「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」を全国8カ所で実施。2016年度までに国内生産量を10年度の1・5倍に拡大させる事業に乗り出した。

 厚労省医政局経済課と研究開発振興課、農水省生産局農産部地域作物課が実施した情報交換会が起点となった。薬用植物に一般的な市場がなく、国内での生産を拡大させるためには、「生産者と実需者をマッチングさせる場」が必要だと判断。厚労省と農水省、日本漢方生薬製剤協会の3者の主催で、全国を8ブロックに分け、生産者と実需者が顔を合わせた説明会を開催した。

 生薬200種類以上のうち、全体の半数となる約100種前後を公募。各都道府県で個々の品目で取りまとめた上で、具体的な活動に着手する。

 14年度予算概算要求では、地域の条件に適した栽培マニュアルの作成や、日本薬局方の品質規格をクリアするための栽培技術の確立など、生産上の課題解決に向けた取り組みを支援する新規事業に4億7000万円を計上。圃場の設置や農業機械の改良などに取り組む民間団体に補助金を出すとしている。

 今月には、神奈川県と富山県、奈良県と企業が連携した「漢方産業化推進研究会(仮称)」が設立。薬草栽培を地域活性化につなげ、“漢方10兆円産業”の目標実現を掲げる。自治体による取り組みも始まっている。

薬卸連、鈴木新体制がスタート‐最強布陣で流通改革完成へ

 日本医薬品卸売業連合会は、一般社団法人へ移行して初めての通常総会を5月23日に開催して役員選任を行い、別所芳樹氏(スズケン会長)から鈴木賢氏(バイタルネット社長)に会長職がバトンタッチされた。

 さらに副会長には、太田裕史(スズケン社長)、鹿目広行(アルフレッサ社長)、河野博行(東邦薬品社長)、吉村恭彰(アステム社長)、渡辺秀一(メディパルホールディングス社長)の5氏が名を連ねている。正副会長全員が主要卸企業の現職社長であり、理事にも全国の実力者が揃っているほか、ご意見番として前会長の別所氏と、元会長の松谷高顕氏(東邦ホールディングス相談役)が顧問に就いている。実行力、決定スピードからも、薬卸連史上最強の布陣と言っても過言ではない。

 ここまでの体制が求められた背景には、遅々として顕著な成果を出せなかった流通改善を一気に進める必要に迫られたこともある。流通改善では、各卸が自主的に得意先との価格交渉で安易に妥結せずに粘り強く取り組み、全品総価取引が大きく縮小して単品単価取引が大勢となり、成果が出ている。

 「次回の薬価改定後の価格交渉では、流通改革を完成する覚悟で取り組むことが必要」と述べた鈴木会長と、それを支えていく薬卸連は、同じく4月からスタートする消費税の損税問題への対応も含め、いくつもの厳しい課題への対応が求められている。

武田が来年6月に社長交代‐GSKワクチンのウェバー氏

国内最大手の武田薬品が次期社長に、ベルギーのグラクソ・スミスクライン(GSK)ワクチン社社長兼ジェネラル・マネージャーのクリストフ・ウェバー氏の起用を決めた。現社長の長谷川閑史氏が、「次期社長は日本人」と明言し候補者の選定作業を進めていたが、グローバル化戦略の中で当初の方針を転換し、異例の外国人のトップ人事に踏み切った。

 武田は、米ミレニアム・ファーマシューティカルズ社やスイスのナイコメッド社を買収し、グローバル化を推進してきた。グローバルに対応した本社機能を強化するため設置したグローバル統括職には、ファイナンス機能にフランソワ・ロジェ氏、海外販売にフランク・モリッヒ氏、研究開発に山田忠孝氏、情報システムにオリビエ・グアン氏という国際色豊かな顔ぶれが並ぶ。そこに、3大陸7カ国で幅広い事業経験と実績があるウェバー氏が次期社長として加わった。

 ウェバー氏は来年4月に新たな役職となる「COO」として入社、6月下旬の株主総会・取締役会での承認を前提に、代表取締役社長兼COOに就任する予定。長谷川氏が会長兼CEO、ウェバー氏が社長兼COOとして業務に当たる。

 武田は、営業利益率改善に向け、17年度までに1000億円のコスト削減を目指す“プロジェクトサミット”を進めているが、そこでの成果は、ウェバー氏の手腕に託されることになった。

薬事日報より

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