吸収性骨接合材等の開発・製造・販売を行っている帝人メディカルテクノロジー株式会社(以下、帝人メディカルテクノロジー)様は、配送センターサービスに加えて、医療機器の貸出・返却・洗浄サービスを鈴与株式会社(以下、鈴与)にアウトソース頂いております。
当初、同社は医療機器の貸出、返却、洗浄に関するノウハウやシステムがないというのが大きな課題として挙げられていた中で、物流拠点の構築からシステムの開発、営業組織の立ち上げを行い、新たなビジネスモデルを実現されました。
今回は新たに物流ビジネスを立ち上げるまでの流れ、貸出医療機器の洗浄サービスのアウトソーシング先に鈴与を選ばれた理由について、帝人メディカルテクノロジー 営業部 デリバリーチーム長の小山敬一郎様にお話をお伺いしました。
貸出・返却・洗浄の新たな物流を構築する。

当社は2017年7月帝人グループのヘルスケア事業領域における発展戦略を加速させるため、タキロンシーアイ株式会社のメディカル事業を買収し、設立されました。整形外科/心臓血管・胸部外科/形成・口腔外科/脳外科の多くの領域に使用される最高レベルの品質を有する吸収性骨接合材料を製造・販売しております。
帝人グループが保有する技術・商流との結びつきを強めることにより、新たな埋め込み型医療機器の開発に挑戦していくとともに、国内メーカーとして製販一体の特徴を生かして、医療現場からの要望やアイデアを迅速に製品化できるような体制を強化させ、医療関係者の方々、患者様のQOLを向上させることを目指しております。
当社は1994年より当初から医療機器の製造・販売を行っていましたが、物流に関しては総代理店に任せていました。会社の方針や様々な背景の中で、一部の領域の医療機器に関する物流を自社で運営しなくてはならなくなったのが大きな変化点だったと思います。
医療機器の物流を自社で行っていなかったという中で、新たに医療機器の貸出・返却、さらには洗浄という工程がある新しいビジネスモデル・物流を構築していかなければなりませんでした。整形インプラントの業界では、手術器械を病院へ貸し出すという流れが主流となっており、そうした流れに対応できるようなサービスを作っていこうとしていました。
当時、工場を物流拠点とすることも検討しましたが、工場の立地では配送のリードタイムが長くなってしまう上に、緊急出荷に対応することができませんでした。こうした点から工場以外の場所で物流拠点を持つ必要がありました。また、物流に関するノウハウもなかったことから、物流に関してはアウトソースをするという選択肢しかなかったというのが実際のところですね。
新たなビジネスだったため、医療機器の貸出業務に対応できるシステムを全く持っていませんでした。従って、システムについてはゼロから開発しなくてはなりませんでした。システムを作っていくためには、物流の流れや業務について知らなくてはなりませんでしたので、総合的に協力してもらえるパートナーが必要だったと感じています。
また、貸出のビジネスにおける営業部隊をつくるといった組織体制を構築しなければならない、という課題もありました。10数名の人を集めて組織を作っていくというのはかなりの労力が必要でしたね。
システムの構築や組織体制づくり、さらには物流拠点の設置という3つの課題に対して、同時並行で進めていかなくてはならなかったのは大変なことだったと思います。
ノウハウや実績・経験があるパートナーが必要だった。
おっしゃる通り、物流のノウハウがあることが1番の条件でした。医療機器、特に整形インプラント製品の取扱実績があり、経験が豊富であればノウハウもあるでしょうし、安心してお任せできるのでは、と思いましたので、実績・経験も重視しておりました。
それ以外の条件は、ロケーションですね。当初物流の2拠点化も考えていましたが、在庫量が2倍までとは言わないまでも1拠点の場合よりも多くなってしまいます。1拠点として考えた場合、全国への配送に対応できる立地であること、つまり羽田空港に近い東京都内の場所、というのが条件でした。羽田空港近くの場所であれば、北海道や九州までも航空便でスムーズに配送できると考えていました。
まずは、先ほど申しあげた必要条件に当てはまっていた、ということです。鈴与さんは平和島に拠点がありましたので、羽田空港にもすぐ近い立地でしたし、都内からもアクセスがしやすい場所でしたので、何かあった時には直ぐに伺うことができるような良い立地でした。
また、医療機器取扱に関しての品質や正確性も大事な要素の1つと考えています。私たちが1番こわいと思っているのは誤出荷や誤配送が起きてしまうことですので、正確にお客様へ届けられるオペレーション能力がある委託先がいいと思っていました。鈴与さんは、医療機器取扱の実績・経験も豊富でしたし、医療機器に特化した物流業務、デリバリー、荷扱いに関する品質・正確性については他社からの評判も良かったんです。その情報がどこまで客観的で正確なものか今となっては分かりませんが、当時はその点も考慮して選定させていただいたと思います。
新たなビジネスの始まり。効率の良い物流を目指して。
これまで経験したことのない新たなビジネスモデルを始めるにあたって、鈴与さんは非常に親身になって対応してくださいました。要件としてどのようなものが必要なのか、このビジネスの常識的なことなど、わかりやすく説明していただきましたし、さらには貸出システムのプログラムを開発する段階でもかなりご協力をいただきました。システムの部分は物流とは別の側面ですので、“物流面しかお手伝いしません”と協力していただけない会社さんもあるかと思います。鈴与さんは物流面だけではなく、それを動かすシステムも含めて一緒になって考えていただけたので、その点は大変ありがたかったと思っています。
現状、まず誤出荷や誤配送はほとんど起きておりませんので、高品質な物流サービスを提供いただいていると思います。現場もベテランの方を配置していただいているので、まったく心配ないと感じております。
一方で、コストの面ですが、医療機器の償還価格は殆ど上がる事はなく、また物流費の上昇が懸念される中、これからコスト削減がよりシビアになり、常に他社とのコスト比較を行うことになると思います。今後は、どのように運用を変えれば効率が上がるのか、物量が増えても同じようなコストでオペレーションできるか、という点を追及していきたいと思っていますね。
そうですね。鈴与さんの方でも、物流動線を合理化していただいたり、鈴与さんで使用している在庫管理システムを開発していただいたり、物流効率化に向けた提案や改善をしていただいております。5年前と比べますと、だいたい1.5倍ほど物量が増加しておりますが、問題なく物流がまわるようになっているというのは、そうした改善が寄与しているのではないかと思っています。特に貸出した医療器械については返却から配送までのリードタイムが1~2日短縮でき、回転率が良くなりました。
私たちが使用しているシステムの面では貸出の物流に合うようなプログラムを開発したことで逆にオペレーションが複雑になってしまい、新しい人が入るとうまくまわらないということが課題となっているんですよね。データでの取り込みを行ったり、鈴与さんから提案いただいたWEB発注システムを導入したりすることで、人に依存せずに業務を平準化できる方法に変えようと思っています。
よりアグレッシブな鈴与の改善力を。
一度委託先を決めると、コストも労力もかかるのでなかなか離れないという現状がありますよね。こうした現状にお互い甘えるのではなく、もっとシビアにコストや物流効率の改善を図っていけるような関係でいたいと思っています。先ほどコスト比較が厳しくなってくるだろうというお話もしましたが、医療機器は償還価格が決まっており2年に1回改定されるので、商品の価格が上がるということはまずありません。そうした医療機器の特性もあるので、いかにコストを抑えていくのか、物流業務の効率化に向けてアグレッシブに改善を実施していってほしいです。洗浄に関しては、今後規模を拡大して洗浄や検査のサービスやスピードを向上していただければ、鈴与さんにとってもよりアピールできるポイントとなると思います。

事業内容:生体内分解吸収性骨接合材等の医療機器の開発、製造、販売
従業員数:79名
本社:大阪府大阪市北区中之島2丁目3番33号 大阪三井物産ビル13階
HP:https://teijin-medical.co.jp/