【漢方和漢薬調査研究審議会】漢方薬の正しい普及と運用目指し‐繁用処方の実態調査

 漢方薬に対する期待が高まる一方で、販売サイドや消費者に十分な知識がないまま供給・利用されたことで、軽度ではあっても有害事象の発生が起きている。これによって漢方薬に必要以上の警戒心を与え、正しい普及を妨げることにもつながりかねない。その未然防止には、販売側が正しい漢方薬の知識を持つと共に、漢方を扱う人材の育成・底上げも望まれる。漢方和漢薬調査研究審議会(根本幸夫理事長)では、漢方薬の正しい運用を行っていくためには、まず漢方薬の運用および販売実態を調査する必要があるとして、横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター(伊田喜光センター長)、一般社団法人日本漢方連盟と協同で調査を行い、その結果を「漢方薬繁用処方実態調査」として昨年報告書にまとめている。漢方薬メーカー、漢方薬局、漢方を扱っているドラッグストアの流通状況を詳細に調査したのは初めてで、業態ごとに異なる特徴が示された。

業態で異なる上位品目の内容‐CM宣伝等が販売動向に影響


 医薬品販売を取り巻く環境と共に、日本の伝統的医薬品である漢方薬を取り巻く情勢にも変化が見られている。中でも大きな問題となったのが、2009年の改正薬事法施行に伴う医薬品郵送販売規制で、漢方薬業界は漢方薬の全面郵送禁止という突然の事態に直面することとなった。

 こうした漢方薬に関する諸問題に対応していく団体、漢方薬を服用している患者の権利を守るべき団体や組織がこれまでなかったことから、根本幸夫氏(漢方平和堂薬局代表)らを中心に、薬局、メーカー・卸等に呼びかけ、日本漢方連盟が09年9月に設立された。同連盟では、漢方・和漢薬・生薬の安全性確保や、漢方・和漢薬・生薬の取り扱いに関する調査研究・提言等を行うことを目的に、横浜薬科大学と日本配置販売業協会の協力を得て、11年11月に「漢方和漢薬調査研究審議会」を設立した。

 そして同審議会では、改めて漢方薬を有効かつ適正に利用するためには、まず漢方薬の運用および販売実態を把握する必要があるとして、広く業界団体、関係機関等の理解と協力によって、医療現場・販売現場などの業態ごとに調査を行った。

 調査報告書は、第1章「漢方薬の生産動向」(漢方薬の生産規模と内訳、生産額の推移、用途別動向等)、第2章「漢方薬の繁用処方と運用・販売の実態」(医療現場で用いられる処方別動向、ドラッグストア・一般薬局、漢方薬局で販売される処方別動向)、第3章「結論」で構成されるが、このうち第2章の業態ごとの実態について、概要を以下に紹介する。

 「医療現場で用いられる漢方薬の処方別動向」では、11年度の販売額による順位、販売数量による順位を、それぞれ上位40処方までまとめている(略)。医療用漢方製剤の繁用処方からは、高エビデンスの論文のあったもの、患者が希望するもの、高齢者の補剤、更年期対策など婦人科の医薬品として――などの需要が高く、用途が限定されているケースが多い。

 販売額による内訳では、上位10処方の販売金額の合計が全体の約40%を占め、30位まででは約65%となっている。上位30処方で全体の65%がカバーされていることからも、医師が用いる処方がある程度集中している可能性がうかがえた。

 「ドラッグストア・一般薬局などで販売される漢方薬の処方別動向」では、全国のドラッグストア、スーパー、コンビニエンスストア、一般薬局、ホームセンター、ディスカウントストアなどのPOSデータを収集し、販売規模を推計したインテージSDIデータに基づいて、一般用漢方製剤の販売額上位30処方をまとめている(漢方薬局、調剤専門薬局は除く。11年4月~12年3月集計、調査店舗総数3211店舗)

 これによると、1位は防風通聖散、2位が葛根湯、3位が八味地黄丸、4位が辛夷清肺湯、5位が小青竜湯、6位が清心蓮子飲、7位が五淋散、8位が芍薬甘草湯、9位が麦門冬湯、10位が猪苓湯など(以下略)

 表1には、漢方専門メーカー各社に一般用漢方製剤の販売額上位品目60処方を挙げてもらい、その順位を点数化して総合化し、上位30処方としてまとめている(流通は漢方薬局を中心に、ドラッグストアや一般薬局なども含まれる。順位のみを点数化しているので、実際の売上高ランキングとは異なる)

 これらから一般用漢方製剤の販売動向を見ると、上位にある漢方処方はTVCMなどで大手メーカーが宣伝している製品に用いられている処方が多くを占める。販売額の内訳では、防風通聖散と葛根湯の2処方で全体の44%を占め、10位までの処方で6割以上を占めており、購入される処方はかなり限定されているといえる。

目立つ漢方薬局の取扱い処方数


 一方、200店舗から800店舗程度のチェーン展開をしているドラッグストア3社に、漢方薬繁用上位処方の理由について聞き取り調査も行っている。上位処方となった理由としては「TVCM品である」(該当する処方は防風通聖散、八味地黄丸、辛夷清肺湯など)、「PBブランドなどの会社推奨品である」(葛根湯、防風通聖散、小青竜湯など)のほか、「市販の西洋薬に該当するものがない」「初期のかぜ薬として定着」「パッケージの訴求が目立つ」「美容ニーズから」「特定の症状に対して用いやすい」――が挙がった。

 総じてドラッグストアなど漢方専門家のいない店舗の場合、販売上位の漢方処方はCM訴求品、会社推奨品などの理由で上位にくるものが多い、また、CMやパッケージ、POPなどの商品訴求イメージにより、消費者も自分に合っているかどうかの相談をせずに購入しているケースが多いと考えられる。

 「漢方薬局で販売される漢方薬の処方別動向」では、漢方薬局における漢方薬の運用実態を把握するため、日本漢方連盟の加盟薬局に対し、アンケートを行った(期間は12年12月~13年1月、有効回答152)。漢方連盟加盟の薬局で扱う漢方処方の種類数では、101処方以上が28・9%と最も多かった。逆に30処方以下の薬局も21・7%あった。

 また、繁用上位20処方を挙げてもらい、各処方が用いられた件数によってランキングをつけたものを表2に掲げた。

 

上位処方ではメーカーの繁用処方調査の結果と大きな差はないが、医療用で特に順位の高かった芍薬甘草湯(今回33位)、大建中湯(65位)や、ドラッグストアなどで順位の高かった防風通聖散(24位)、芍薬甘草湯、辛夷清肺湯(98位)などは順位が低くなっている。

望まれる専門的知識での対応


 今回の漢方繁用調査を通して、いくつかの傾向が浮かび上がったが、「結論」としてドラッグストア・一般薬局などに対しては、「メーカーが異なれば商品名が変わり、同じ処方であっても異なる処方として認識されているケースも少なくないと考えられ、そうした混乱を防ぐ工夫も必要。さらに、かぜ薬、胃腸薬、頻尿予防薬、更年期疾患対策などの婦人薬、腰痛・神経痛薬などといった、比較的消費者のニーズの高いジャンルは、ジャンル別に処方の鑑別が可能なガイドがあると、より良いと考えられる」とした。

 漢方薬の場合、副作用といっても瞑眩反応や誤治に類するケースも多く、西洋薬の副作用と一律に論じられない場合が多く存在するが、患者にとって予想外の反応が出た場合は、全て薬の有害性として認識されてしまうことも多い。また昨今は、アレルギー体質や過敏体質を持った人が多いこともあり、数十年前では起こり得なかった反応を示すケースも存在する。

 漢方薬が広く普及していく過程でこうしたことは避けられず、漢方薬局に向けては、より専門的な知識を持った専門家が、この点に寄与する必要性も指摘した。

「漢方重要処方60」を上梓‐基本理論などやさしく解説


 この漢方薬繁用処方実態調査の結論部分でも触れているが、「幅広い薬局が漢方薬を扱えるようにするためのガイドライン的なものが必要ではないか」ということ、さらには医師・薬剤師をはじめ、漢方薬を扱う者は漢方重要処方の30処方程度は使いこなせるべきではないかという関係各方面からの提案もあって、新たに漢方を取り扱おうとする人に向けた入門書であり、専門家のアドバイス・指導等の一助にもなる「漢方重要処方60」(B5判236ページ、本体定価3300円)が、今月出版された。

 横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター編で、同大学教授の伊田喜光、根本幸夫両氏が監修。さらに横浜薬科大学、日本漢方連盟、日本薬剤師会、日大医学部附属板橋病院東洋医学科、日本漢方連盟医師顧問団など、薬系・医系の多くの編集委員で構成している。発行元は万来舎(東京千代田区)

 総論では「陰陽論」「五行説」「気血水」など、漢方を学ぶ上で必ず知っておきたい基本理論をやさしく解説。前記の実態調査の結果も参考に、各論では最重要処方の60処方を厳選している。最も基本的な「必修処方」が30、頻繁に用いる「繁用処方」が30の合わせて60処方で、漢方の重要処方のほとんどが理解できる。

 このほか、難解な「証」と症状の見方・ポイントをイラストで分かりやすく解説している。適用疾患と処方構成、図表による処方解説で、各生薬の作用が一目で分かり、各処方の主な疾患と他の処方との“証の鑑別”で最適な処方がすぐに分かるのも特徴。これまで漢方の独特な理論体系が初学者の壁となり、医系・薬系を問わず漢方の裾野が広がらない現状があったが、その意味でも同書は画期的な入門書といえよう。

 同書の中では、漢方薬の処方構造を理解するための“生薬配合理論”が解説されている。監修した根本氏によれば「中薬大辞典(中薬を体系的にまとめた 漢方薬の大辞典)を用いたが、新版と旧版で大分違うため、それを読み比べて比較するなど、各処方の解析に時間を要した」という。なお、文献類の出典元も全部調べて載せている。

 例えば、麻杏甘石湯と麻杏{くさかんむり+意}甘湯は、処方構成の麻黄、杏仁、甘草は同じで、一部が違う。麻杏{くさかんむり+意}甘湯はリウマチの薬だが、咳が治ったということもあるし、一方の麻杏甘石湯も腰痛が治ったという例もある。「専門家としては生薬の組み合わせを覚えておくと、さじ加減する時とか、いろいろ応用ができる。薬剤師にはそこの部分を学んでもらえれば」(根本氏)としている。

薬事日報より

受付:平日9:00-18:00  担当:福井・大石

  • ISO認証・取得ライセンス一覧
  • 医療・化粧品物流ブログ
  • 医療・化粧品物流用語集
フリーダイヤル 0120-998-094
お気軽にお問い合わせください! 平日 9:00 - 18:00 担当:福井・大石
お問い合わせはこちら
お見積・資料請求はこちら